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「"モテ男はエッチが下手"の法則」をゴリラとチンパンジーと人間の睾丸のサイズの比較から探る

「"モテ男はエッチが下手"の法則」をゴリラとチンパンジーと人間の睾丸のサイズの比較から探る
日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり


今月のコラムは、久々に「性」に触れてみようと思います。
動物行動からみる人間の「モテ男」をテーマに考察していきます。
「モテ男はエッチが下手」
実はこれ、ただの愚痴でも冗談でもなく、霊長類の進化を見ると妙に納得してしまう話なのです。今回はゴリラとチンパンジーを比較しながら、その“法則”を読み解いてみます。

まず、ゴリラのオスとメスとの関係性をみていきましょう。
以前「早漏がダメな理由」をある生き物から説明したコラム(早漏はダメ?動物行動から見るピストン運動に隠された役割)を書きましたが、ゴリラはそもそも“早漏とか気にする必要がない世界”で生きています。

なにせ、あの巨体で“マックス時で3センチ!”。睾丸は体に埋もれるほど小さく、そして“三擦り半”で終わってしまいます。

そんなに短時間で大丈夫なのか?と人間女性なら衝撃的すぎて、黙っていられなくなるようなレベルの話しですが、ゴリラ界ではそれでOK。

なぜなら、精子がやたら強いのです。

哺乳類の中でもトップクラスの“強靭さ”を誇り、睾丸のサイズに比例して精子の数も少ないのにも関わらず、少数精鋭で確実に妊娠を“決めていく”スタイルなのです。

「果たしてメスゴリラは不満ではないのだろうか・・。」

と思ってしまうのが人間の“メス”の感覚ですが、ゴリラの性の世界は、不満を感じる必要がない世界構造なんです。
ゴリラのオスはハーレム(3〜6頭のメス)を作り、基本的に自分のメスを他のオスに取られる心配がありません。だから、長く愛撫したり、メスを悦ばせて他のオスと差別化を図るという必要がそもそも進化圧として存在していません。
とにかく、危険だらけのジャングルの中で「素早く・確実に・次へ」。
“悦びよりも、繁殖優先”!
性的満足よりも安全と安定が重要視されるため、オスの性器そのものは進化圧を受けにくいのです。
そして浮気の概念もほぼなし。一夫多妻の家族型だけど、コロニーの外で遊ぶ必要がないのがゴリラの世界です。

一方、チンパンジーはどうでしょう。
ここはゴリラと真逆で、乱交社会のど真ん中にあります。
オスは5〜10頭、メスは10〜20頭というコロニーを築きます。
メスは発情中なら複数のオスと交尾し放題で、オスがどれだけ強くても“完全独占”なんて夢のまた夢。
その結果どうなるかというと、競争に打ち勝つために進化がとんでもない方向へ向かうわけです。

なんと、睾丸がゴリラの16倍!!
乱交ということは、とにかく“精子の数”で勝負する世界です。

メスは発情期に複数のオスと交尾します。
オス同士にも順位争いがあるものの、誰か1頭がメスを完全に独占することはまず不可能で、どのオスも常に競争状態に置かれています。

このため、チンパンジーのオスはゴリラの16倍もの巨大な睾丸を持ち、膨大な精子を生産して“精子戦争”に勝ち残ろうとします。

また、父親を特定しにくくすることで「子殺し」を避けるという、複雑な戦略すら取られています。
「オスによる子殺し」については、他のオスとの間にできた子どもを殺してメスを発情させ(メスは、子育て中は発情しにくい)、自分の精子をメスに植え付けるというものです。
これは、熊やライオン、鹿、あらゆる動物に見られる繁殖行動です。
妻の連れ子に虐待する人間の男はある意味動物的なのかもしれません。

いずれにしても、チンパンジーは、まさに、ゴリラと真逆の進化の道を歩んだ霊長類なのです。

さて、私たち人間はどうでしょう。
人間の睾丸サイズは、
チンパンジー > 人間 > ゴリラ
という“中間ポジション”にあります。

歴史を振り返ると、側室や妾など、ちょっとしたハーレム的文化もあったことは事実ですが、これは権力者や経済的余裕者に限られる話です。

一般的には、一人の女性に一人の男性という形をとってツガイ(夫婦)で生きる動物です。
かといって生まれてから結婚するまで、またはパートナーを得るまで、「何度か相手が変わる」ということも多くの人間は経験します。
これがまさに、「ゴリラとチンパンジーの間」を物語っているようです。
ある種のその中途半端さが、人間の性行動の複雑を象徴し、睾丸のサイズが物語っているともいえます。
そして動物行動を調べていると、ふとよぎるわけです。


「モテる男ほど下手」って、ゴリラの法則に近いのではないか と。

一見「遊び人」と混同してしまいがちですが、「モテ男」というのは、チンパンジーのように自分から積極的にメスにアプローチするわけでなく、“メスから”一方的にもてはやされるので、モテるための話術も何も磨く機会に恵まれません。

また、勝手に“メス”が寄ってきてしまうので、ひとりの女性にどっぷり向き合うということもしないできてしまう方は多い印象です。

つまり、寄ってくる“メス”複数と同時進行して、まるで“自分だけのハーレム”を錯覚しているような振る舞いになってしまうということです。
するとどうなるか。
深く向き合う必要がないので、技術が磨かれないんです。
これはもう、完全に“ゴリラの進化しないパターン”と同じ構造ともいえます。

ただし、睾丸が少し控えめなタイプは、浮気リスクも乱交リスクも低めともいえます。

ゴリラが浮気しないのと同じで、ある意味“安定志向”の可能性もあるわけです。

さらに、人間の男性は陰茎骨(バキュラム)を失った珍しい生き物。
ある説では、女性が「自力で勃てる男だけを受け入れた」という“女からの挑戦”だったとも言われています。
古代エジプトのミイラに不自然なまでに誇張されたペニスが付けられていたり、アフリカ民族のペニスケースが象徴的に扱われるのも、そんな性の象徴文化の名残かもしれません。

最終的に思うのは、どんな動物でも、「オスを進化させるのはメス」だということです。
ゴリラが“3センチの三擦り半”でも成立したのも、チンパンジーが“精子戦争”に走ったのも、そして人間の男性が複雑怪奇な性行動を見せるのも、全部「メス側の選択」が作りあげた結果なのではないでしょうか。

恋愛の最終決定権は、“メスにあり”ということですね。