早漏はダメ?動物行動から見るピストン運動に隠された役割
日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり
早漏はダメ?動物行動から見るピストン運動に隠された役割
この春の時期になると、皆さんからはダイエットのご相談に併せて、「恋をしたい!」など恋愛のご相談もちらほら目立ってきます。いかにも春らしくあり、私たち人間も動物なのだな、としみじみします。
さて、そんな中、今回は久々に「性のお悩み」について触れていきたいと思います。
時折女性から、とっても小さな声で、
「彼のが小さくて・・・」
「彼早いんです・・・」
というご相談をいただきます。
これは決して愚痴ではなく、
「彼自身も気にかけているのではないか。
ならば解決してあげたい」
といったニュアンスでのご相談です。
この様なお話があると私は、
「女性の身体に負担なくていいじゃないですか。膣もゆるくならないし、呼吸も浅くなる時間が短いってことですからね」
なんて答えるのですが、そうすると皆さん一瞬ハッとした顔をして、
「確かに。」
と納得をします。
そうなのです。
性行為は呼吸が浅くなるし、血圧も上がるし、体力の消耗という“コスト”がとってもかかる行動なのに、よりも、その“コスト“がかかった方が”世の中的に良し“とされるって、よく考えてみると不思議ではありませんか?
これにはどういった根拠が隠されているのか、動物行動からひも解いてみましょう。
そもそも、霊長類でこれだけピストン運動をする動物は人間だけです。
ゴリラの精子はとても強く、必ず卵子に到達するとも言われるほどです。
しかも、性行為はほんの数秒!
ジャングルには危険がいっぱいなので、人間の様に悠長に構えていればあっという間に他の雄に雌を横取りされてしまい、縄張り戦争の宿敵に後ろから襲われてしまいます。
性行為の速さと精子の強さは、危険環境の中でいかにDNAを紡いでいくかという中での工夫なのかもしれません。
では、人間ではどうでしょうか。
一説には、人間がピストン運動を長くするようになった(人間が長くなったのか、ゴリラなどの霊長類が短くなったのかは謎)のには、
「“先着の”他の雄の精子を掻き出して自分の精子での受胎率を高めるため」
と説いている動物行動学者もいました。
確かにこの考えで行くと、ペニスが小さいと掻き出すパワーが弱くなるので、”小さいこと”もネガティブに認知されるという根拠にはなりますね。
では、霊長類以外でピストン運動が長い生き物は存在するのでしょうか。
はい。見つけました!
ヒメフンバエというハエが、人間のピストン運動の秘密について教えてくれそうです。
ヒメフンバエとは、日本でもおなじみの、8~10mmほどの小さなハエです。
なんと、ヒメフンバエの雄にとって、交尾時間の長さがDNAを残すために重要なテーマになるというのです。
それは、交尾時間の長い雄の精子が、その前に交尾した相手の精子に“取って代わって”雌の卵子と受精するというのです。
つまり、乱交の虫の世界では、性交時間が一番長い雄が勝者となるわけです。
これは驚きです。
人間の歴史には、雄は縄張りでコロニーを作り、一夫多妻という時代が多くの国にありました。
これはゴリラの集団的社会性に似ていますが、ヒメフンバエの生殖活動の例は、他の雄がコロニーを襲った際の生殖の強さにも関わってくる話のような感じがします。
また、人間はアタッチメント(愛着形成)が人格形成の上で最も重要な生き物です。
性交時間を長くとることが、肌の温度の受渡しや、愛情、族性を守る行動(戦争もそのひとつ)にかり立たせるホルモンであるオキシトシンの分泌に有利に働くので、性交時間を取るようになっていったのかもしれませんが、ヒメフンバエの例を人間の男性が、悩まなければならないひとつの根拠として考えてみると、とても興味深いと思いませんか。