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YOGA・武術・歌・話す に共通する身体活動 

 

YOGA・武術・歌・話す・・に共通する身体活動 

                日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり

 

ここ数年において世界的にヨガ健康法がブームになり、ちょっとしたヨガストレッチや朝晩の呼吸を意識して瞑想するなど、日常に取り入れている方も多いのではないでしょうか。私も、カラダが疲れるとねじりのポーズやスネークのポーズでケアをし、寝る前には腹式呼吸で神経を整えるというのを日課にしている一人です。 

長年アーユルヴェーダサロンやヨガクラスで皆さんのお身体に触れていると、体調を崩しやすい方の特徴に「呼吸の浅さ」があります。 

ヨガの神髄は「呼吸法」であり、つまり「呼吸のコントロール」にあります。ヨガといっても種類は様々で、スタンダードなハタヨガは腹式呼吸法をメインとしており、心身の不調を整えるのには一番適しています。また、もともと成人男性向けの修行の一つだったアシュタンガヨガにおきましては、ピラティスとも共通するところが多く、胸式呼吸がメインとなりますので、リハビリテーションとしての肉体のダメージ回復や、強靭な肉体を作るのに適しています。 

皆さんご存じのように、腹式呼吸は「副交感神経=リラックス神経」を優勢に立たせますので、ストレスケアやリラックスに身体を導きます。胸式呼吸はその逆で、「交感神経=アクティブ神経」を優勢に立たせるので、夜よりは、朝に向く呼吸法であり、リラックスというよりは“心身を鍛えぬく”ことに向いているものです。ヨガ呼吸法は64通りもあるといわれており、例えば、わざと過呼吸にしてどんな状況でも耐えゆる心身を鍛えていくというヨガ行者の修行のひとつです。 

ヨガは、もともとインドのカーストの低い方たちが、アーユルヴェーダを受けることができずに、自身で健康を促進、維持させていかなければならない状況の中で、「空気だけは神の許可がいらないもの」という発見のもと、神に近づくための修行として開発された呼吸法を駆使した全身運動です。 

また、ヨガだけでなく、東インド地方(ベンガル~バングラディッシュ含)には「バウル」と呼ばれる、歌を業とする修行僧も存在します。バウルの歌は、日本の詩吟のようなもので、彼らの歌う修行は神への歌の献上、歌うことで神に近づくというものです。彼らの歌の神髄もまた、「呼吸法」にあります。息を吸う、吐く、止める・・は歌に必要な呼吸法であり、ヨガの呼吸法の開発と重なるように開発されていったものと一説には言われております。 

「話す」という行動も、「呼吸法」の一種です。
特に、息を吸うよりも、「吐く力」が必要であり、呼吸=吸うではなく、実は「吐く」方が重要であるともいえます。声の大きな人、肺活量の強い方は、カラダが丈夫だというのもやはり、酸素をうまく体内に取り入れ、吐き出す筋力もしっかりしているので呼吸法がしっかりできていることが分かります。 

また、武術や舞踊においても、「吐く息に合わせて身体を使う(動かす)」ということが多いです。つまり、吐くときに筋肉を弛緩させて身体をを自由に動かせるようになるのです。

特に武術においての呼吸法はヨガと共通するところが多く、「ヨガと武術の起源も重なる」と言われているのがよく分かります。 

数年前から、中医学の学びの一環として、様々な武術を学んでいるのですが、特に「システマ」というロシア発祥でカナダで発展した軍人のための武術においては、これはまさにヨガ修行によく似ています。 

初めてシステマの道場にお邪魔した際に、先生が「システマって痛いんですよね〜」と言いながら私の手首に関節技をかけてきました。もちろんすごく痛く、突然だったのでびっくりしたのですが、システマは「痛み(緊張)ありき」がスタート地点なのです。
痛みのない攻防はあり得ないわけで、「その痛みをいかに軽減させていくか」「いかに傷を浅く済ませるか」というところに特化した武術であり、「緊張とリラックスが対にある」というのがよく分かる内容です。 

つまり、「リラックスできない人は緊張できない=全身に筋肉力入れられない」。痛みがあることにより、身体が緊張状態になり、その後、軽減させるのに、「肩から力を抜いて息を吐きながら緊張をほぐしていく」というプレッシャー&リラックスが対になって概論が成り立っている術なのです。 

言ってみれば、交感神経と副交感神経を交互に出現させるような脳のリハビリ治療のような感覚と言えます。

これは私のジョホレッチというメゾットにも共通する考えです。 

また、まるで“自分で関節技を決めるている”ようでもあるヨガの無茶なポーズもまた、システマと同じく、呼吸法(息を吐きながらリラックスする)で関節や身体の痛みを軽減させながら鍛える効果があったのだと再発見できたのは面白かったです。 

突然手首関節技を決められたかと思えば、今度はうつ伏せや仰向けになり、激痛を覚える経絡(ツボ)を押されて、悲鳴を上げる間もなく、呼吸を意識して、息を吐きながら肩~肘や膝、指先へとリリースしていく意識の練習を繰り返します。関節決められた時に、指先から意識して力を抜いていった際に、痛みを解除できたのは新感覚でとても面白い経験でした。 

お腹に衝撃を当てられた時には、自分のカラダが水袋だと思って、衝撃の瞬間に肩を上げて息を吐くという面白い呼吸法でした。横隔膜を上げながら肺から空気を抜く方法は、システマ独特の呼吸法です。 

こんな内容を読んでいると痛々しい気持ちになるかもしれませんが、不思議と翌日の筋肉痛やダメージはありませんでした。ただ、リリース法を習得する前にかけられた関節技の箇所だけ痛みが残りましたので、リリースさえ、つまり、呼吸法と合わせて身体のリラックスさえきちんと習得できれば、軍人へのトレーニングや、身体回復にとても理に語っているものなのだと非常に興味深い内容でした。 

こういった経験から、呼吸法、プラーナ(もちろんシステマではプラーナという言い方はしない)を意識して身体を使うという術は、まさに東洋医学の進化版であり、戦場でいかにリラックスした状態を保つかに取り入れられて開発された武術だと実感した瞬間でした。 

また、呼吸法をマスターすると、腹式呼吸により副交感神経が優勢になり、胃腸の働き、内臓の働きがよくなります。そうすると、内臓のストレスも抜きながら全身リラックスした状態になりますので、美肌効果もあるでしょう。実際にシステマの先生は現在47歳の男性ですが、シワ、シミなど一切なく、とにかく美肌で驚きます。肌を見るだけで、内臓が綺麗な状態で免疫力が強い身体だということが一目瞭然です。 

古代から伝わる呼吸法は様々な分野で応用されならが歴史を歩んできています。この地球上で生きる生物すべてに共通する生きる上での一番重要な身体活動が「呼吸」です。

最後に、私もメゾットでお伝えしている、心身を整える呼吸法をお伝えします。

 

1 胸筋を広げ、呼吸しやすい姿勢になります。
2 丹田(子宮のあたり)に両手を重ね、軽く目を閉じて、手を重ねているお腹の箇所へ空気をためるように鼻から息を吸い込みます。この際、長くて4秒くらいです。今度は、両手で丹田を軽く押すようにしながら、口から6=8秒かけて強く息を吐き切っていきます。この時のポイントは「呼吸音」です。①自分の呼吸音と、②お腹の膨らみ&凹むの動きに意識を向けて呼吸を繰り返してください。この、①と②がより大きくできるようになると、呼吸がスムーズになり、疲労回復効果や自律神経を整える効果、ダイエット効果も期待できます。

 

今一度、「上手な呼吸法」「リラックスできる呼吸法」を見直してみると面白いかもしれません。