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漢方薬で子どもが授かりやすいカラダつくり

「漢方薬で子どもが授かりやすいカラダつくり」

五野由佳理

菅(すが)前総理が「不妊治療を保険適応にします!」と宣言したのを覚えていらっしゃいますか。
今年4月からやっと保険適応が開始されました。
以前に比べて少しは経済的負担が軽減されたかもしれませんが、まだまだ身体的、精神的負担は大きいものがあると思います。

 

そもそも日本の平均初婚年齢は、1980年で女性25.2歳、男性27.8歳でしたが、2021年では女性29.5歳、男性31.0歳と約40年間で男女共に約4年延びています。
第1子出産の女性の平均年齢も、1980年は26.4歳でしたが、2021年30.9歳と4年遅くなっています。

自然妊娠率は35歳を過ぎると明らかに下がってくるのは事実ですので、妊活のスタートラインが後退していることも出生率が下がってきてしまう1つの要因と言えるでしょう。最近では、未婚の女性が卵子の凍結保存することもされていて、将来に向けた保険の1つだと考えます。ただ、保険適応ではないためにかなり高額な費用になるようです。

子供が授かりにくい原因として、女性の場合、子宮筋腫や子宮内膜ポリープや卵管閉塞など婦人科的な適切な治療が必要なことがあります。男性の場合にも、生活習慣病によるものや、薬剤性、精索静脈瘤、精路閉塞障害など原因となる疾患の専門的な治療が必要となることがあります。それ以外に機能的な問題や原因不明な不妊症には、漢方薬を使う価値はあると考えます。

 

子供が授かりやすい体にするには、女性の場合、次の3点が軸となります。

① 胃腸を強める

② 身体を冷やさない

③ リラックスする

全ての方に当てはまる訳ではありませんが、往々にして不妊で悩まれている女性の方にはこのうちのどれかが必要です。

① 「胃腸を強める」

胃腸の働きを良くして、必要なエネルギー源を充分に吸収し、赤ちゃんの受け皿となる母体をしっかり作るということが必要です。不妊治療で有名な漢方医の先生は、まず胃腸を立て直すことが大事!と言われています。漢方薬では、胃の動きを良くする六君子湯、胃を温めて働きを良くする人参湯などがあります。

 

② 「身体を冷やさない」

受け皿となる母体の血行を良くすることで、排卵・着床・受精卵の成長を促します。寒い場所は居心地が悪いですからね。2021年の全国都道府県別出生率が最も高い所は沖縄県だそうです。暖かい所は開放的になることもあるかもしれませんが、生命にとっても居心地がいいのでしょう。漢方薬では、月経不順にも使う当帰芍薬散があります。この薬は、下垂体や卵巣にも作用してホルモンを調整すると言われています。また、温経湯も名前のとおり温める薬ですが、視床下部や下垂体に作用してホルモン調整をするようで、いずれも不妊治療には欠かせない薬です。

 

③ 「リラックスする」

常に仕事や家庭の事でイライラしたり交感神経系が優位に働いていると上手く行きません。不妊治療が長引くと追い詰められて、常時妊活のことが頭から離れなくなってきます。一旦、妊活から離れた途端に妊娠される方も少なくありません。漢方薬では、気分を持ち上げるシソが入っている香蘇散、イライラを落ち着かせる抑肝散などがあります。

 

次に、男性の場合ですが、精子の運動率を上げる漢方薬としては、体力が比較的ない方には補中益気湯、体力はある程度以上あるけれどストレスがかかりやすい方には柴胡加竜骨牡蛎湯があります。また、勃起障害(ED)は内科疾患による影響や薬剤性によるものもありますが、漢方医学的には、腎虚(じんきょ)という生命活動エネルギー不足の1つであると捉えますので、八味地黄丸や桂枝加竜骨牡蛎湯が挙げられます。八味地黄丸は身体を温める作用の薬ですので、冷え症の方には良いですが、あまり冷えがない方には使いません。最近、サウナに入る方も多いようですが、精子は熱に弱いので、冷えがひどくない方はあまり長時間のサウナは注意された方がよろしいかと思います。

男女共に子供が授かりやすい体に近づけるよう漢方薬を上手く使ってみてはいかがでしょう。