夏の「火」のエネルギーと心身の不調
日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり
アーユルヴェーダには、「風+空(ヴァータ)」「火+水(ピッタ)」「土+水(カパ)」という3つの体質があるとされます。
その中でも、夏は「火(ピッタ)」のエネルギーが自然界でも体内でも強まる季節。
火は本来、消化・代謝・知性・情熱などを司る重要な要素ですが、過剰になると、心にも体にも様々な不調を引き起こします。
たとえば、今年は夏が長く、このような症状を訴える方が既に増加している印象です。
・頭がズキズキと痛む
・体が熱く、顔が火照る
・胃のムカつきや胸焼け
・肌が赤くなりやすい(湿疹・ニキビ)
・汗が止まらない
・イライラして些細なことで怒ってしまう。
これらはすべて、「火のエネルギーが高まっているサイン」。
つまり、「自分の心と体がちょっと熱を持ちすぎている」状態なのです。
◆「嫌なことばかり起きる」…その正体は?
「最近、職場でやたらと苛立つ」
「家族の言葉に敏感に反応してしまう」
「友人のLINEがそっけなく感じて気になる」
実はそれ、自分の内側の炎が外の出来事に投影されているのかもしれません。
心が疲れていると、脳はネガティブな情報に敏感になります。
ほんの一言で怒りが爆発したり、他人の行動に悪意を感じてしまったりします。
その状態で火のエネルギーが高まると、小さな火種が一気に燃え広がるのです。
◆火の暴走で起こる、人間関係のトラブル
職場:「エアコン寒すぎるんだけど…」「いや、暑がりの人もいるんだからさ」
→ 些細なやりとりが、攻撃的な口調に変わり、雰囲気が険悪に。
家庭:「夕飯これだけ?」「じゃあ食べなきゃいいじゃない!」
→ 疲れの蓄積に火の影響が加わると、感情の爆発が避けられなくなる。
友人関係:「そっか、またね」
→ 文字だけのやりとりに不安や怒りを感じ、勝手に誤解や疎遠を生んでしまう。
◆「火」を鎮めるためのヒント
火を扱うコツは、“冷ます”ことです。心も体も、少し涼やかに整えてあげる必要があります。
身体面へのアプローチとしては、水分補給をしっかりと(常温〜やや冷)
・ミント・しそ・ローズなど清涼感ある食材やハーブ
・夜の入浴はぬるめの半身浴
・刺激物(辛いもの、揚げ物、カフェイン)は控える
・冷房の当たりすぎには注意しつつ、首・脇などをクールダウン
メンタルケアのヒントとしては、夜更かしは火を煽るので、なるべく早く寝る習慣をつける。
・SNSや人間関係に一線を引く勇気を持つ
・「正しさ」で裁こうとしない。感情よりも距離を大切に
・深呼吸・自然との触れ合い・静かな時間を意識的に持つ
怒りや火照り、言葉の鋭さ、苛立ち…それら「誰か悪い」のではなく、ただ「火」が過剰になっているだけかもしれません。
自分を責める前に、物理的にも身体を冷やし、心も冷静に冷ましてあげることを意識してください。
怒るよりも沈黙する。批判するより距離を取る。
相手のせいにせず、「今、私の火が強いだけかもしれない」と気づくだけでも、世界は変わって見えるはずです。
意識ひとつ、生活習慣にアーユルヴェーダを取り入れると、怒りも疲れも、涼しい水に流せるようになりますよ!