「ストーカー被害者と加害者の心理特徴」 日本女性ヘルスケア協会長鈴木まり
今月は、犯罪心理についてお話ししたいと思います。先日、初となる、犯罪心理と護身術の勉強会を開催しました。ご参加者様は全員女性。ここ最近、全国のどこかで毎週起きている切付け事件、ストーカー被害。イベントを告知したInstagramの投稿は、約1万名の方が閲覧していましたので、関心の高さが伺えました。
今月は、"ストーカー"をテーマに少し掘り下げてお話ししたいと思います。
ストーカー被害に遭いやすい方には、いくつかの共通点があります。
もちろん、ストーカー被害に遭う可能性は、誰でもありますが、犯罪心理学の観点から「狙われやすい人の傾向」がいくつか指摘されています。
これは決して「被害者側に責任がある」という意味ではなく、加害者が標的を決める際に利用しやすい要素として理解してください。
》被害者の特徴
1. 断れないタイプ
相手の気持ちを考えすぎて「嫌だ」とはっきり言えない人は、加害者からすると「押せば関係を続けられる」と解釈されやすくなります。
断ることは相手を傷つけることではなく、自分を守る大切な行為と心にとめておきましょう。
2. 注目されやすい人
外見的に華やかで目立つ、SNSで活発に発信している、人気があるなど「他人の目を引く人」は、加害者から特別視されやすくなります。
人前に立つ活動をしている人ほど、プライベートな情報の取り扱いに注意が必要です。
3. 孤独や悩みを抱えている人
自分に自信がなく、人とのつながりを必要以上に求めてしまうと、加害者に「つけ入る隙」があると感じさせてしまいます。
心の弱さは誰にでもあります。支え合う仲間や相談先を持つことが予防につながります。
4. 境界線が曖昧な人
「ここまでならいいか」と個人的な領域を安易に許してしまうと、相手の要求が徐々にエスカレートしていく危険があります。
相手との距離感をしっかり持つことは、信頼関係を築く上でも必要なことです。
5. 過去に深い影響を与えた人
かつて恋人・友人・職場関係で強い印象を残した場合、「忘れられない存在」として執着されることがあります。
過去の関係性が理由で狙われる場合、早い段階で第三者や専門機関を交えることが有効です。
【注意】
これらはあくまで「狙われやすい要素」であり、決して本人に落ち度があるわけではありません。重要なのは、特徴を知って早めに対応する意識を持つことです。
では、次にストーカー加害者の心理を見ていきましょう。
》ストーカーする人の心理と特徴
ストーカーは「恋愛の延長」や「強い愛情」と誤解されがちですが、実際には相手を支配したいという歪んだ心理が根底にあります。
また、加害者になる背景には、幼少期からの成長過程における発達心理学における各ステージ(口や肛門など、身体の感覚器の発育に伴う心の成長)のテーマでの挫折(ミルクがもらえない、オムツを取り換えてもらえず不快感の中で成長した等)、学童期における劣等感や執着心の形成、仲間などの社会生活での不一致などの要因が複雑に絡まっています。
どの様な認知の歪みを起こしてストーカー行為をしてしまうのか、見てみましょう。
1. 強い執着と依存
相手を「自分のもの」と思い込み、拒絶されても関係を断てません。「別れ」を受け入れられず、再びつながろうと過剰に行動します。
2. 境界線を理解できない
プライバシーや個人の自由を尊重せず、自分の欲望を優先します。繰り返し連絡することや付きまとうことを「愛情表現」と正当化します。
3. 自己中心性と未熟な人間関係
他者の気持ちを理解する力が弱く、「自分が望む通りにならないと怒りに変わる」という未熟さを抱えています。
4. 拒絶への耐性の低さ
断られることを極端に恐れ、時には「裏切られた」と感じて逆恨みに至ります。別れをきっかけにストーカー化するケースは非常に多いです。
これは、殺人事件に発展するケースもあり、海外においては、10代の殺人事件としても目立ちます。
5. 被害妄想や思い込み
「相手も本当は自分を好きに違いない」「気づいていないだけ」といった根拠のない確信を持ち、現実との境界が曖昧になります。
》ストーカーは「愛情の延長」ではなく、自己中心的な執着と支配欲求から生まれる行為です。
被害者側には「狙われやすい特徴」があるように見えますが、実際には加害者が自分勝手に解釈して利用しているに過ぎません。
大切なのは、
①境界線を明確にすること
②「NO」を伝える勇気を持つ、
③不安を感じたら一人で抱え込まず、警察や専門機関に相談することです。
どなたも被害者になり得ます。だからこそ「予防と意識」が最も重要です。
犯罪心理を知ることは、不安を増すためではなく、自分を守る手段を得るためにあります。ぜひ、日常の中に護身の知恵を取り入れてみてください。