5月に体調を崩しやすい理由と「五月病」対策~症状・地域差・公的支援まで解説~
日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり
春から初夏へと移り変わる5月。新生活にも少し慣れてきた頃ですが、「なんだか気分が晴れない」「朝起きられない」「やる気が出ない」……そんな体調不良を実感したことがある方は多いと思います。
この時期の、体と心のバランスが崩れやすい「五月病」などの不調、つまりバーンアウトは多くの方が経験します。
今回は、バーンアウトのその原因や症状だけでなく、地域差・対策・支援制度について、お話したいと思います。
特に人事に関係する仕事の方、マネージメント業の方はぜひ参考にしてください。
◆ なぜ5月に体調を崩しやすいのか?
5月は、以下のような環境変化が心身に大きな影響を与える時期です。
朝晩の寒暖差や気圧の変化
ゴールデンウィーク後の気持ちの緩み
4月に始まった新生活への適応疲れ
梅雨前の湿度の上昇や日照不足
こうした要因が重なることで、自律神経が乱れ、風邪・胃腸炎・アレルギー・不眠・メンタル不調などが増加します。
◆ 「五月病」とは?主な症状と特徴
「五月病」とは正式な病名ではなく、適応障害やうつ状態に近い症状を指します。特に新入社員や大学生に多く、以下のような状態が2週間以上続く場合は注意が必要です。
朝起きられない/仕事・学校に行きたくない
- 食欲不振/または過食
- 無気力・焦燥感/涙が出る/感情が不安定
- 頭痛・腹痛・動悸など体の不調
- 自己否定的な思考、イライラが増える
- こうした状態が続くと、本格的なうつ病に発展する可能性もあるため、早期の対応が大切です。
◆ 通院数は他の月の1.5倍に?若者が多く受診
厚生労働省や精神科医師の調査によると、5~6月は心療内科・精神科の初診数が通常の1.3~1.5倍に増加しています。特に若年層(20~30代)や新入社員、新入生に集中しています。
◆ 地域別の傾向:大都市圏に患者が集中
患者数には地域差もあります。精神科・心療内科の外来受診者は以下のような傾向があります。
東京都・大阪府・愛知県:全国平均を大きく上回る(約1,400人/10万人あたり)
地方(東北・中国地方など):受診数は少なめだが近年増加傾向
沖縄など南西地域:受診率は低いが、医療アクセスが少ないのが要因とも
都市部では新生活のストレスや孤立感、医療機関のアクセスのしやすさが受診増加に直結しています。
◆ 企業や学校が取るべき対策とは?
▶ 企業側の対応策
新入社員向けの段階的オンボーディング
- 上司向けのメンタルヘルス研修
- 産業医・カウンセラー面談の活用
- 社内アンケートや匿名相談フォームの導入
- 有給取得を積極的に促す文化作り
▶ 学校側の対応策
新入生との定期的な面談機会の確保
- 学生相談室の利用促進と周知
- 孤立防止のための交流イベント
- 授業や出席の柔軟な対応
◆ 公的な支援制度も活用しよう
「五月病」によって働けなくなったり、長期的に症状が続く場合には、以下のような公的制度が利用できます。
✅ 傷病手当金(会社員向け)
月給の約67%を最長1年6ヶ月支給
- 社会保険加入者が対象
✅ 自立支援医療制度(精神科通院費の軽減)
通院費が1割負担に軽減される制度
- 精神科・心療内科に継続通院している人が対象
✅ 精神障害者保健福祉手帳
日常生活に影響が出るほど症状が続く場合に申請可
- 税制控除や公共交通割引、就労支援などのメリットあり
◆ まとめ
五月病は「誰にでも起こり得る一時的な不調」です。大切なのは、無理をせず、早めに気づいて対処すること。生活リズムを整え、必要なら医療機関や支援制度を活用し、心と体を守りましょう。
「なんだか最近しんどいな」と思ったら、または、身近な人にその様な方がいれば、それは心からのサインかもしれません。気軽に相談できる社会や職場・学校づくりが、何よりの予防策です。