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女性の為の性交痛治療と膣ケア法~Vol.13

 

女性の為の性交痛治療と膣ケア法~Vol.13

                      日本女性ヘルスケア協会長 鈴木まり

 ひと昔前では、中年期を過ぎた女性は子育てを終え、かすがいだった子が自立したことで、夫と改めてどう向き合えばよいのかと精神的ストレスを抱える方のお悩みが多くありました。しかし、近年においてはいくつかの私の著書でも紹介しております通り、もう一歩踏み込んだ、中年期以降の女性の「性のお悩み」が年々増えています。 

 背景には、晩婚化と離婚率の上昇、また、シングルの方の増加によって、「恋のリミット」が無くなったことも要因の一つではないでしょうか。 

 女性のクラインと様とお話をしていると、夫といつまでも恋人のようにいたい、人生また花咲かせたい、「母親」という前に「ひとりの女性」でいたい・・・など、皆さんの口から当然のように出てくる言葉です。 

 いつまでも綺麗でいたい、いつまでも女性としての艶を忘れずにいたいというのに加え、年齢に関係なくパートナーとの肉体的なコミュニケーションも楽しみたいという方が増加しています。 

 そこで、今回は、「性交痛」について触れていきたいと思います。 

 性交痛の原因は様々ですが、最も多いのが陰部の乾燥と、潤いが足りていない中での性交により摩擦で痛くなるというものがあります。 

 40歳以降に多いお悩みで、性交時の潤いが以前より足りないと感じている方がとても多いです。また、閉経後や、子宮がんなどで子宮摘出をされている方で膣委縮が起きている方にもとても多い現象です。 

 こういった場合には、性交時に無理をせず市販の潤滑ゲルやローションを使用して、会陰の入口をしっかり潤してから行う、または、注入式ローションで、膣内にローションを注入してから行う方がよろしいでしょう。 

 乾燥した状態で無理に行うと、傷をつくってしまいますし、状態が悪いと傷口から感染症なども起こしかねませんので、乾燥した状態での挿入行為はなるべく避けたいところです。 

 また、近年においては、膣内のレーザー治療も人気です。 

 もともとフェイシャルエステの技術を膣に応用した炭酸ガスレーザー治療で、膣内、外陰部、尿道口周辺にレーザーを当てる治療で、こちらは、膣委縮、性交痛、産後の膣のゆるみにも対応する治療として注目を集めています。 

 ただ、もともと外陰(膣口)のサイズが小さい方で挿入時にうまくいかないという方にはやや効果が薄いというのも報告されています。 

 以前、トランスジェンダーの方で女性に性転換された方にお話を伺い、お身体を拝見させて頂いたことがあるのですが、彼女の場合、自身の男性器を利用して会陰部を造形移植し、奥行きは浅いものの膣造形手術もされた方でした。膣造形の際には、手術後すぐはどうしてもカラダが「傷口」と認識してしまい、治そうとしてしまう、つまり、膣口を閉じようとしてしまうため、しばらくの一定期間の間、ワインコルクの栓の様に、膣口に蓋を挟めておいたそうです。 

 このお話を伺った時に、膣委縮や元々膣口が小さく性交痛でお悩みの方に応用できるのではないかと感じました。 

 「膣や会陰の保湿とマッサージはどうしたらよいか」というお問合せも多くあるのですが、ご自身の指でのマッサージだけは保湿と皮膚を柔軟に保つというところには効果が発揮されましても、正直のところ性交痛の改善にまではいかないでしょう。 

 ご自身の指よりも、男性器のサイズの方が大きい場合が多いでしょうから、パートナーの方の勃起時のサイズと同等か、またはご自身で痛みを感じにくいサイズのプレジャートイなどでローションや保湿液を用いながらマッサージされた方が性交痛改善の効果は高いです。 

 プレジャートイ未経験でご自身での取り扱いに困ってしまう方は、男性器を模ったものがS/M/Lからサイズを選べるようになっているものもありますし、ご自身で出し入れなどの動作を行わなくても、電動で先端が回転式のものもありますので、初めての方で膣口の柔軟マッサージとしてご利用されるにはこの様なものがオススメです。 

 ヨーロッパの場合、こういった際のプレジャートイの支給は保険適用となり、女性の為の治療として国で認められています。 

 日本ではどうしてもまだまだ「嗜み」や「エロス」のイメージが強く、プレジャートイを購入、また利用することに抵抗のある方が多いと思いますが、ご自身のカラダを傷つけない、感染症を起こさない、コミュニケーションをスムーズにし、人生をより豊かにするために、時にこのような道具に頼るというのも、ご自身のカラダを労わり向きあうという意味でもとても大切なことだと感じています。 

 いよいよ乾燥の季節到来、お顔の乾燥も気になるところですが、乾燥はカラダ全身するものです。肌の乾燥は少しの刺激で傷ができやすくなりますので、マッサージの際は、指のささくれや爪などで絶対傷をつくらない様に気を付けて頂き、陰部もしっかり保湿と潤いのケアを徹していきましょう。